全体最適②

全体最適にも色々な視点があると思いますが、一回目はVEの概念に近いライフサイクル視点での全体最適(部分最適、全体不適)についてお話ししたいと思います。

日本の製造業では、すでに原価企画の概念や仕組みを導入・展開している企業が多いと思われます。原価企画では新商品開発の源流である企画段階で商品全体や構成部品ごとに目標コストを設定し、設計段階でそれぞれを目標コストに到達させるようなプロセス・アクションが一般的と思われます。例えば、Aという部品の担当設計者の立場で言えば、要求機能を満足しながら与えられた目標コストに入るような設計構造を一生懸命に考えます。しかしA部品が大きくて形状が複雑で、尚且つお客様の使用段階では、部品交換が定期的に発生する部品だと仮定します。だとすればA部品のライフサイクルコストはサプライヤーからの購入価格に加えて、梱包・輸送費や部品交換費用などの比重も大きくなることが容易に想像できます。その場合、A部品の担当設計者に全体最適の視点がないと梱包効率の悪い構想や交換費用の掛かる構造を設計してしまう可能性があります。結果としてA部品の購入価格は目標コストを達成したかもわかりませんが、梱包費、整備費が大きい為にA部品全体では部分最適ではあるが全体では不適という状況になります。A部品設計者に全体最適の視点があり、後工程で多大が費用が発生することが判ったとしても、設計部門に課せられた役割は担当する各部品を目標コストに入れることなので、自分の担当している部品コストを上げてまで他部門、あるいは他企業の為に構造を変えることは、一般的には無理があります。その為には設計部門が不利にならないような何らかの救済措置の仕組みが必要になります。このようにライフサイクル視点一つを取っても、部門を横断して、あるいは企業間を横断して全体最適を追求するためには、それなりに企業内の仕組みや啓蒙活動というインフラが必要になります。よって原価低減を模索する立場としては、その分野にまだまだ改善余地があるのでは?と思う次第です。